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   2008.9.11作成


2008年度合宿報告(2008年9月1日(月)-2日(火))

精興社青梅本社見学
精興社は1995年まで活版印刷を行っていた会社で、独自開発した書体「精興社書体」は文字の美しさで定評があり、また美しい印刷のために一度使用した活字は再使用しないというこだわりを持っていました。

精興社青梅本社には、かつて活版印刷を行っていた際に使用していた機械や活字が保存されており、活版印刷の工程が見てとれるようになっています。

活版印刷の工程は、まず印刷する原稿が到着したら、「文選」と呼ばれる活字を拾い出すことからはじまります。そして印刷する形に活字を並べ整えていく「植字(精興社では「ちょくじ」と呼んでいたらしい)」が行われ、版を組み上げます。版が組み上がったら試し刷りを行い、著者に「校正」を依頼します。何度か校正を行い、最後の校正「責了」が終わると印刷するための版を作る工程に移ります。ちなみに印刷する版を作成後、組まれた活字は再使用せず、炉で溶かして新たな活字を作る原料となりま す。

印刷する版を作成するために、はじめに組み上げた版に特殊な紙をのせ、圧をかけて「紙型」を作成します。それに鉛を流し込み「鉛版」を作成します。これが印刷するための版(刷版)となります。鉛版を作成後、修正がある場合はその修正度合に応じて「象嵌」という、修正箇所を切り取り、そこに修正したものを埋め直す作業が行われます。印刷後は鉛版は保存しないので、重版などの印刷要求があってもすぐに鉛版が作成できるよう、印刷の前に紙型を取ります。そして印刷機に鉛版を「面付」し、印刷を行います。

現在、精興社ではCTP(Computer to plate)印刷となっていますが、精興社書体はOpenTypeとして生まれ変わり、現在でもその美しい書体を書籍などで見ることができます。

精興社見学風景
[精興社見学風景]

精興社ホームページ内のコンテンツ「精興社博物館」では、活版印刷について詳しく説明されています。
リンク 精興社ホームページ http://www.seikosha-p.co.jp/

東京修復保存センター見学
東京修復保存センターでは、リーフキャスティングをはじめとした資料の修復や、保存箱作成や脱酸処理などの資料の保存、そして最適な資料保存のための調査やコンサルティングを行っています。

リーフキャスティングは、虫食いなど欠落した部分を手早く修復するための技術で、東京修復保存センターでは設立当初よりリーフキャスティングを行っており、現在ではアジア最大級の機材を有しています。東京修復保存センター代表の坂本氏がデンマークで資料修復を学んでいる際に出会い、帰国後機材を取り寄せます。西洋の紙(洋紙)と日本で使用されていた紙(和紙)は原料などが異なっていたため、和紙にも対応するための研究を専門機関とともに行い、完成させま した。

リーフキャスティングは紙漉きに近い形で行われ、欠落した部分に紙に合わせて調合した繊維が埋められていきます。欠落した部分のみに繊維が埋められていくので紙の厚みが変わらず、また手作業で行うよりもずっと早く修復できるのが特徴です。紙漉きに近い形で行われ、紙を水に浸すことををきらう依頼者も多かったとのことですが、作業を行う前の調査やリーフキャスティングの利点などを広く啓蒙し、次第に理解を得られているとのことでした。

脱酸処理については、Bookkeeper方式を採用しており、今回はスプレー式の脱酸処理を見学しました。新聞や1枚ものの処理はスプレーで液剤をむらなく吹きかけ、少し乾燥させると処理が終わります。大変簡単で拍子抜けするくらいでした。

その他、資料の修復や保存について、たくさんのお話を聞くことができました。

東京修復保存センター見学
[東京修復保存センター見学]

リンク 東京修復保存センターホームページ http://www.trcc.jp/

中央大学図書館見学など
中央大学図書館では、はじめに高野彰著『洋書の話』増補版 *1 の輪読を行いました。そして中央大学図書館が所蔵しているホッブス著『リヴァイアサン』Head版 *2 を閲覧し、前期の研究発表で用いた記述書誌と照らし合わせて確認しました。

また、中央大学図書館を見学しました。

*1 : 高野彰, 『洋書の話』, 増補版, 丸善, 1995.
*2 : Thomas Hobbes "Leviathan, or the matter, forme, & power of a common-wealth  ecclesiaticall and civill", 1651, London.


謝辞

今回、見学などを快く引き受けてくださいました株式会社精興社、有限会社東京修復保存センターの皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


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