広報誌・PPR電子復刻版(Planning & Public Relations)
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9巻1号
通巻78号
1994年6月1日
発行:
私立大学図書館協会
東地区部会研究部
企画広報分科会
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特集:オリエンテーションを探る
今月のPPRは、新緑の季節に行われる、新入生のための図書館オリエンテーションに、テーマをしぼってお知らせし、利用者教育について再認識することが制作の意図である。
オリエンテーションの現状
利用者教育の一環としての、新入生に対する図書館オリエンテーションは、過日の国立国会図書館における「大学図書館長との懇談会」の資料となったアンケート結果によると次のようになっている。
新入生に対する一般的なオリエンテーションに
図書館ガイダンスを含めている。
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165館(83%) |
新入生に対する図書館独自のオリエンテーション |
88館(44%) |
定期的な館内ツアー |
39館(20%) |
当分科会のメンバーの図書館(回答数11館)は、どうなっているだろう。16項目のアンケートの結果から探ってみることにする。
1.オリエンテーションに対する各館の概念
- 利用方法・事務処理の流れを説明するもの・OJTとなるもの。
- ユーザー・アウェアネスを目的とする。
- 図書館紹介・説明の機会。
- 図書館の基本的な使方を教えるもの。
- 利用者が自発的に利用しやすいように教育する。
- 4年間の大学生活の中で、図書館を充実して利用する指針を示す。
- 図書館利用の衆知と図書館利用の促進をはかるために実施するもの。
- 大学図書館機能についての基本的な知識を与え、積極的な活用を促すもの。
- 図書館・図書館員に対し、親しみを持ってもらうためのもの。
2.オリエンテーションの名称
- 図書館オリエンテーション(3館)
- 図書館ツアー(2館)
- ゼミガイダンス(2館)
- 図書館利用について(1館)
- 図書館ガイダンス(2館)
3.オリエンテーション実施目標(複数回答)
- 図書館の紹介・施設の説明(7館)
- 図書館の機能理解(2館)
- 利用指導(3館)
- 利用率の向上・利用者の拡大(2館)
- 情報検索の基礎知識・理解(3館)
4.実施のための計画書・企画書の有無
その名称は?
- 説明パンフレット
- 企画書
- 実施マニュアル
- 実施計画書
5.実施期間
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期間
- 1週間(4館)
- 2週間(2館)
- 1ヶ月以上(2館)
- その他(3館)
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6.実施形態
- 学部主催<教務課・学生課との合同>(3館)
- 図書館主体
- ゼミ単位(2館)
- 希望参加(4館)
- 学部別・研究科(2館)
7.実施内容(複数回答)
- 利用方法などの口頭説明(7館)
- ビデオ上映(4館)
- 集団館内ツアー(8館)
- OPAC検索(4館)
- スライド・館内施設紹介(1館)
- 文献資料の配布・実演(1館)
8.担当者人数
- 2名(3館)
- 4〜10名(5館)
- 10名以上(2館)
- その他(1館)
9.経費
- なし(5館)
- 5,000円以内(3館)
- 10,000円以上(3館)
10.準備に費やした時間
- なし(1館)
- 数時間(4館)
- 1週間以内(1館)
- 1週間以上(5館)
11.広報手段(複数回答)
- ポスター(6館)
- ちらし(5館)
- しおり(3館)
- 学内報(3館)
- 館報(1館)
- 口コミ(2館)
- 掲示用紙(2館)
- その他(たて看板、横幕、アナウンス)
12.参加率
- 90〜100%(4館)
- 60〜70%(2館)
- 50%以下(2館)
- 確定していない(3館)
*参加率の高い館は、学部主催の場合が多い
13.来年度にむけての参考ポイント・参加者の感想
感想
- 図書館を利用することで、豊富な情報を手に入れることができると思った。
- 案内の人が親切に教えてくれて、分かりやすかった。
- レポート作成の時なでに、是非利用したいと思った。
- 説明してくれる人がいるだけで、理解できる度合いが違うと思う。
- このような企画は、必要だと思う。これが利用者にとって図書館利用のきっかけになるのでは。
- 図書館利用法を理解することは、自分にとってかなりプラスになると思った。
参加者の希望
- もう少し時間がほしい。もっと奥まで学びたいと思った。
- 細かい所まで、もう少し詳しく知りたいと思った。
- 定期的なツアーを実施して欲しい。
- さらに次の段階のガイダンスを受けたい。
- OPACの検索実習を時間の中に入れてほしい。
- 資料などの探し方については、時間をかけてゆっくり説明してほしい。
感想からうかがえる改善点
- 人数が多すぎる
- 時間が短い
(時間にこだわることはない。参加者は、充分な説明を求めている。)
- 館長の利用紹介については、あまり記憶にない
- 初めて聞く言葉だったので、説明内容を理解するのに苦労した。
- OPACの検索は、自分でやってみないと分からない
14.実施後の事務処理(報告書の有無)
- 特に作成していない(3館)
- 報告書を作成している(5館)
- 年間事業報告に掲載(1館)
- 記録を取る(1館)
- 館内各課・広報委員会へ報告(1館)
15.職員・教員の協力状況
職員
- 協力的である(9館)
- 協力的でない(2館)
教員
- 協力的である(9館)
- 協力的でない(2館)
16.共同制作のポスター・栞・掲示用紙使用の有無と感想(複数回答)
- ポスター(6館)
- 栞(2館)
- 掲示用紙(2館)
- 使用していない(3館)
感想
- 広報の手段として有効である。
- 掲示のみで参加しているとは思えない。
〜オリエンテーションは、利用者教育のはじめの一歩〜
そもそも利用教育とは、『ALA図書館情報学辞典』によれば、『図書館サービス、施設、および組織、図書館資源および探索戦略を利用者に教えるために計画したすべての種類の活動を示す用語、参考調査業務の一環として一つまたはそれ以上の参考資源の利用法を教えることや、図書館利用および書誌利用指導を含む』ものであり、新入生オリエンテーションはその第一歩であるといえる。段階的利用教育という考え方が定着していない現状では、今回のアンケート結果だけを見てもまだまだ改善の余地がありそうだ。最後にオリエンテーションの指針となる文献を引用してこの特集のまとめとしたい。
鳥取大学では、長年の「利用者教育」活動、すなわち新入生に対する「オリエンテーション」に始まり、図書館ガイド(利用案内)、日常の「個別指導」(レファレンス・サービスの一環として従来から行われている狭義の利用指導)、上級学年に対して講義、演習形式による「情報検索報」指導へと発展する一連の教育が、「利用記録」の数字のうえでも、記録にあらわれない通常利用者の図書館内における行動を現象面でとらえても効果を上げているようにみえる。(中略)
学生が図書館を非利用になる理由に
- 「図書館は自分の要求に不十分」
つまり資料が不足していることをあげている。図書館に対する不信感は、始めから諦めて図書館で資料を検索しない場合、実際には所蔵しているのにも関わらず利用者検索のミス、技術の未熟さがあげられる。
- 図書館に「なじめない」
「開館時間」「利用手続き」といった図書館における規制に対する拒否反応や、図書館の態度、図書館の雰囲気に対するmentalな拒否がある。
- 図書館のPR不足がある。
上記のような「理由」が全て図書館への不信と化し利用を妨げている。不信の解消は、「利用教育」の一つの目的でもある。
どのような「利用教育」が望ましいのか
「図書館ガイド」と「オリエンテーション」は、参加経験度が高いにもかかわらず利用者が図書館について学び得たとは、いえない。それと対照に「講義」「個別指導」は、「二次資料による情報検索法」を中心に「論文の書き方」「目録」について教え、利用者の理解度も高い。
「参考資料」は、レファレンス資料として参考するばかりでなく、もっと利用者自ら利用できるよう、書誌解題をし利用法を教えるべきであろう。(中略)
学生の情報行動
「利用教育」をうけていない学生は、課題が出た場合「書架で直接資料を検索する」行動が多く見られる。「目録」を見ないで、直ぐ書架へいったとすれば、その結果は、「資料不足」という観念を植えかねない。
「図書館員に尋ねる」という行動は、「個別指導」を受けた学生に多く、「講義」の受講者がこれに続く、すなわち「受講した」学生は、指導・教育にあたった図書館員の情報検索に関する知識・技術及び指導力を認め、信頼し、つぎの機会に「情報」を必要とするとき、探し方が分からなければ、「図書館員に尋ねる」ことに抵抗が少なくなった。図書館員への信頼度を示しているといえる。(中略)
利用者教育の効果は、第一に「講義」による「情報検索法」の指導。第二に「個別(レファレンス・サービスにおける利用指導)」がより高いことが分かった。
しかし、「オリエンテーション」「図書館ガイド」をレベルダウンしたり、オフすべきではなく、利用教育は対象者のレベルに相応して、段階的に実施すべきものである。
「オリエンテーション」は、新入生が最初に「図書館に接する」機会である。従って一度により多くの「内容」を盛り込むことが「効果」を生むとはいえない。むしろ「図書館」と「図書館員」に親しませることに重点を置いたプログラムが必要である。
穴道勉 「利用者教育が図書館利用に及ぼす効果について」
『大学図書館研究』 No.23,1983年11月,p.9-p.19
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