UPDATE:2007/5/7

 パブリック・サービス研究分科会 メッセージ


21世紀の大学の図書館員とは:皆様の出発を祝して

     慶應義塾大学 加藤好郎

図書館サービスのコンテンツが変化している。図書、雑誌の紙の世界、電子ジャーナル・電子ブックの電子の世界、そしてアーカイブスの史料の世界。企業の、導入期に始まり、成長期、成熟期、やがて衰退期に突入する商品のライフサイクルは、まさに図書館におけるサービスのライフサイクルでもある。OPAC全盛の現代において、カード目録の存在感は薄い。当時は、図書の貸出のたびに、3枚綴りになった貸出票の3枚目までカーボンが写るように、ボールペンを力強くはしらせたものである。今、米国の図書館界では23歳以下の若者達を、デジタル・ネイティブと呼び、それ以上の人々をデジタル・イミグラントと呼んでいる。

図書館の変化に伴って、図書館員の役割も変化する。私は、現在、専門職として9つの機能をあげている。財務戦略、構想力のあるザ・ライブラリアン(ディレクター)。選書、貴重書を中心にした書誌に精通したビブリオグラファー。アーカイブスを扱えるアーキビスト。図書館システムの立ち上げ、メンテナンスの専門家としてのシステム・ライブラリアン。電子媒体資料の購入、評価ができるエレクトロニック・ライブラリアン。所蔵資料のデジタル化および機関リポジトリーの構築のための知識、技能を持ったデジタル・ライブラリアン。書誌ユーティリィティーの継続的な研究者としてのカタロガー。フェイス・トゥ・フェイスのサービスおよび情報リテラシー教育、デジタルレファレンスも視野に入れたレファレンス・ライブラリアン。そして逐次刊行物に特化したサービスを行えるシリアルズ・ライブラリアンである。

今、米国では深刻な図書館員不足の問題を抱えている。米国では、戦後ベビーブームは、1946年から約20年続いたわけだが、そのべビーブーマーの図書館員は、2010年から2019年の間には、半分近くが65歳に到達する。また、特に若い女性の図書館離れが進んでいる。図書館員全体を占める割合では、相変わらず女性が多いが、中年層の女性が第2・第3の職業として図書館員を選ぶケースが増えている。米国がくしゃみをすれば、日本が風邪を引くではないが、私の経験では、このような米国での波はいずれ日本に到達する。

今回、PS研究分科会に参加なさった皆様が、この2年間で知識、技能そして感性を得ることで、大いにステップアップしそれぞれの図書館を支え、リードする立場で活躍する時代がすぐそこに来ている。現状では、どんなにつまらなそうに見える業務でも、その始めから最後までを丁寧に業務遂行することで、工夫が生まれ、そしてその工夫が利用者サービスにつながり、図書館員への評価(信頼)が高まることになる。そのためには、これからの図書館員には、コミュニケーション能力とバランス感覚も必要になる。

皆様は、今、専門職としてのライブラリアンのスタートラインについたところです。元気、やる気、勇気、根気の4つの気を忘れずにこれから2年間精進してください。