第二回館長会会議録
1. 日 時:2003年6月12日(木)12:00〜13:30
2. 場 所:東京経済大学 6号館 7階 中会議室3
3. テーマ:大学における図書館の組織的位置づけ
4. 参加館長名:別紙
5. 議 事:
会を始めるにあたり、部会長校である法政大学白井館長より、今回の館長会のまとめは詳しい議事録は出さず、要旨を私図協ホームページに載せる方法で行ないたいとの提案があり、異議がなかったため、その方法で各館への報告を行なうことになった。
(1) 館長会開催の趣旨:白井法政大学館長
東地区部会には、従来から館長・事務長会という正式な会議体があるが、メンバーである館長の出席が少く、教員である館長が図書館の運営にどれだけ係わり、どういう役割を果していくのかということへの啓蒙の意味から、昨年部会長校であった文教大学の宮内館長が提案され、発足したものと記憶している。昨年の館長会では、図書館と情報リテラシー教育について意見交換を行なった。館長会を定例化し、拡大強化する方向で、意見交換を行なうことにより、各大学において図書館政策の参考としていきたいと考える。
(2) 複数キャンパス、複数図書館の館長問題
問題提起:白井法政大学館長
多くの大学では、複数のキャンパスを有し、それぞれのキャンパスに図書館を置かれていることと思うが、館長の位置づけ及び権限、代表館の有無等状況を教えていただきたい。
補足説明:永井法政大学多摩図書館長
法政大学は、現在3つのキャンパス(市ヶ谷、多摩、小金井)それぞれに図書館を置いており、小金井では、工学部長が図書館長を兼ねている。また、昨年より事務サイドが一元化され、1人の事務部長により統括されるようになった。そこで、理事会より、事務組織に対応し、3図書館の運営方法を見直すようにいわれている。たとえば、館長の位置づけ、権限等で、3キャンパスに1人でいいのか問題になっている。洋書の高騰等で、予算が不足している状況で、複数キャンパスに重複している資料を削減する方向であるが、事務サイドだけで効率化を行なうのではなく、教員の責任者を各キャンパスに置く必要があるという意見もある。集中管理型に移りつつある図書館に独立色のある運営、あり方がもとめられている。
早稲田大学の状況報告:紙屋館長
4キャンパスにそれぞれ図書館があり、教員図書室等30近くの組織に分散している。組織的には分散しているが、機能的には統合していく方向で進めている。館長という役職は中央図書館と所沢図書館にあるが、中央図書館長が兼務している。各キャンパスには教員からなる運営委員会と事務サイドの担当課長がいる。中央図書館と他の図書館との情報の交換は、月2回開催される管理職会議で行なわれる。
2003年度より、各図書館の予算編成と執行は中央図書館で集約し、出来る限り一元化することになった。狙いの一つは、膨大化する電子ジャーナルの予算確保である。もう一つは、業務を業者に委託し、中央図書館で図書の発注から目録作成まで一貫した作業で行なうことにしたことである。ただし、選書権は各図書館でもっており、中央図書館の資料管理課が集約している。
(3) 図書館と情報センターとの関係
慶應義塾大学の状況報告:細野メディアセンター所長
5のキャンパスに図書館があり、それぞれメディアセンター所長がいる。慶應義塾図書館という場合は三田メディアセンターを言う。細野所長が三田メディアセンター所長であると同時に全センターの所長も兼ねている。
情報基盤の整備等はインフォメーションテクノロジーセンター(ITC)が担当している。ITCにも所長がおり、メディアセンターとITCを統合したものをメディアネットと呼んでいる。メディアネットの所長でもある。同じ情報であっても技術分野を分けたほうが良いということで、組織的には統合しているが、機能的には別組織となっている。メディアITC協議会という会議体で両センター合同の会議を行なっている。事務サイドで完全に分けた方が良いという動きがあるが、まだそのようになっていない。
東京工科大学の状況報告:北見メディアセンター長
メディアセンターには、図書館、学内ネットの管理、学生インターネット利用管理の3つの機能があり、全体の会議がメディアセンター委員会として月1回開催されている。図書館関係では、図書ワーキンググループで選書等図書館に伴う運営を行なっており、センターの副委員長より報告する形になっている。業務的には切り離せるところもあると思われる。また将来図書の電子化の問題が出てくるとインフラと手をつないでいく必要も出てくるのではないか。
教室情報コンセントは、教務の管轄であり、研究所はセンターの管轄である等組織が入り組んでいる状況である。
青山学院大学の状況報告:高森館長
今のところ統合の動きはない。
相模原に新キャンパスを作るに当たり、新しいキャンパス像を模索していく中で、図書館の位置付けについて考える機会があった。図書館棟はメディアセンターとして、キャンパスの中央に設置された。
図書館と情報科学センターと組織は別になっている。 教育・研究支援体制等どこで管轄するのか判断が難しい領域が出てきた。 教材開発センターを作る動きもあり、ランゲージラボを含め、どこでどのように管理するのか、大学として考えていかなければならない。
パソコンで図書館の利用・検索をおこなう新しい学術情報システムを来年導入する。それとの係わりで、発注システムの一元化を行なうためのインフラの整備も取り組まなければならない問題である。
立教大学の状況:吉森館長
メインキャンパスが池袋に、そして新座に2学部を有する第二キャンパスがある。図書館は完全に一本化している。それは@図書資料は全学で利用しなければならない。A他大学との相互利用の窓口として効率が良い等の理由による。2006年には新座にもう1学部設置するが、そのときもこの体制は維持する。全学の情報インフラ関係は、メディアセンターというところで行なっている。専任は少なく、企業からの出向者と共同で運営しており規模は小さい。数年前に図書館との統合の話がでたが、資料と情報機器とでは馴染まないという意見があり、それ以上統合化の話は進んでいない。
図書館とメディアセンターの接点として全学組織の情報企画委員会がある。新座キャンパスは、2006年に学生数が4000人となり、パソコン設備を図書館とメディアセンターが共同で管理・運営する可能性を現在模索中である。
(4) 中央図書館、学部図書館(資料室、教員図書室、学科研究室)、研究所との関係
中央大学の状況:長崎館長
複数キャンパスを有している。情報センターに関して、数年来慶応大学を研究し、ハードとソフトを分けることになり、総合学術情報サービスセンターの設立を計画している。学内情報を統一して早く公開することを目的に、全ての情報を取り込むことになった。研究所は情報量が多いことから、遡及入力で2・3年後に全てのデータが入る見込みである。携帯電話で、検索・貸し出しが出来るシステムを考えている。ただし、学長直属の研究所2箇所は貴重書が携帯検索と馴染まないということで外されている。
白百合女子大の状況報告:室城館長
図書予算は、備品と同様に全て学科予算に一元化されている。学科予算の中から図書の予算も決まる。学科図書とするか図書館に設置するかを考えながら選書している。ほとんどOPACで検索できるようになっているが、センターで独自に購入した資料は一部検索できないものがある。
文学部だけの単科大学のため、図書媒体が中心であるが、情報教育の重要性から、インフォメディアセンターを図書館とは別に設置した。統合に関してはこれからの問題である。
※2003/07現状の補足として:2003年度よりインフォ・メディア・センター(語学教材を図書館とは別に収集管理してきた情報システム所属の部門)は解散し、その資料は図書館に移管された。基本的にソフトウェアとそれを利用するための機器は、今後の拡充も含め、図書館管轄とすることとなった。
実践女子大学の状況:日浅館長
図書館と情報センターがあり、理事会より統一の話が出ているが、まだ具体的になっていない。図書関係の予算はまとめて図書館に配分され、図書館から学科へ割り当てるようになっているが、最初から学科予算に含めたほうが良いのではないかという意見も出てきた。
大正大学の状況:一島館長
情報に関しては、サーバー室において学内ランおよびホームページでの検索管理を行なっている。図書は約41万冊あるが、図書館が希望どおりの広さでなく、年々増える一方の資料を置く書庫スペースがなくなっている。総合仏教研究所があるが、独自予算のため、連携はほとんどない。現在各学科図書の2/3程度が検索できるようになっている。
(5) その他
1.図書館理事が図書館長を兼ねている大学は、参加校の中になし。
2.現在図書館と情報センターの統合の話が出ている大学は、参加校の中になし。
3.保存書庫問題
中央大学の状況:長崎館長
保存書庫にいれる資料の選考基準
第一に重複資料を選考。次に部門別で選考する。例えば文学部の全集等。ここまでを事務サイドで行なったが、教員より反発がでたため、昨年より委員会形式で、各学部より2名の委員を出し、図書館で作成したリストを、チェックすることになった。3冊目は廃棄にすることも考えているが、基本財産なので、廃棄は難しいと言われている。
東京経済大学の状況:宮下館長
昨年4月図書館長に就任して感じたことは、図書館は長い間あまり根本的な改革をしてこなかった。つまり図書館はあまり改革の必要性はないというようなとらえかたが強かったように思われる。しかし、本学の図書館も現実はスペース問題を含めて他大学と同様な多くの諸問題を抱えている。これらの諸問題を解決するには、根本的には図書館を新設してもらわなければならないと考えており、その方向に大学当局に働きかけていくつもりである。そのようなことを進めていくためには図書館長は明日のことを考え、日常的なことは、副館長(事務長)の役割として、機能を分担してやっていきたいと考えている。私どもは東京多摩地区にある5つの大学で図書館の相互利用を行なっているが、今後それをより活発にするためには、授業面の交流を活発にすることが重要である。明日の大学は図書館の改革からという意気込みが大切である、と思う。
以上