第三回館長会会議録


1.日時:2004年6月18日(金)12:00〜13:30
2.場所:日本女子大学西生田キャンパス九十年館A棟第一会議室
3.テーマ:大学図書館サービスと業務委託
4.参加館長名:別紙
5.議事:
      会を始めるにあたり、部会長校である永井法政大学館長より、今回の館長会のまとめは詳しい議事録
     ではなく、要旨を私図協ホームページに載せる方法で行いたいとの提案があり、異議がなかったため、
     その方法で各館への報告が行われることになった。

  (1)館長会開催の趣旨:永井法政大学館長
          東地区部会には、従来から館長・事務長会という会議体があったが、部会長校として2003年度総会で
       廃止を提案し、その後アンケートにより加盟館のご意見を集約し、今年度から廃止された。
          館長会は、一昨年、部会長校であった宮内文教大学館長が提案され、発足したものである。昨年の
       館長会では、「大学における図書館の組織的位置付け」というテーマで意見交換が行われた。館長会
       を定例化し、拡大強化する方向で意見交換を行い、各大学における図書館政策の参考としていきたい
       と考える。

  (2)「大学図書館サービスと業務委託」
     事例報告:法政大学図書館事務部長 阿久津興一
     ○業務委託の契機
       a.他大学図書館訪問
            他大学を訪問し、パブリックサービスとテクニカルサービスの業務委託について、他大学の状況を調査した。
       b.改革へ向けて
            三館(市ヶ谷、多摩、小金井)の統合に伴い、業務方針として訴えたのは、業務の効率化で
          ある。また、図書館業務はサービス業であるという意識改革を図った。
     ○業務委託への取り組み
       a.2003年度の取り組み
            専任職員だけのサービス向上には限界があるため、2003年4月から貸出・返却サービスの業
          務委託が始めた。これにより開館時間の延長、休日開館日の増加が実現され、年間開館日数は
          325日(市ヶ谷図書館)になった。また、年始は5日から開館し、予想以上の利用があった。
       b.2004年度の取り組み
            2004年4月から、図書資料発注先が基本的に統一化され、図書資料の受入・整理業務(発注
          から配架まで)の業務委託が始められた。これは迅速な業務処理を目指したもので、最短では
          4営業日で配架され、開架の和雑誌は発売日の10:00までに配架される。
    ○業務委託化の課題・問題点
       a.職場での合意形成にはエネルギーが必要である。
       b.館員の協力が得られなければ、業務委託の仕様書作成が困難になる。
       c.予算編成時期と業務委託化の検討時期が合致しないときは、予算措置の調整が必要になる。
       d.十分な説明を行い、誤解による反発を教員から招かないようにする。
       e.理解と協力を求めても、一部の書店から反発が生まれる。
    ○委託業者とのコミュニケーション
          円滑な業務遂行のためには、コミュニケーションを十分にとる必要がある。本学図書館では、つぎの
          措置が講じられている。
       a.委託業者の研修会に、図書館管理職が参加し、ミッション等についての説明を行った。
       b.担当者レベルの打ち合わせ(週1回)、管理職レベルの打ち合わせ(月1回)、委託業者スタ
          ッフと管理職の懇談会(年1回)が開かれている。
       c.詳細なマニュアル・報告書を提出してもらい、文書上の業務確認も行われている。
    ○業務委託の効果
       a.サービスの飛躍的な向上が見られ、利用者の評価が高まった。それは学生が発行する新聞や
          ミニコミ誌での評価、図書館の行ったアンケート調査によって明らかである。
       b.専任職員はコア業務へ専念できるようになった。すなわち、@レファレンス体制の強化、A
          利用者教育の改善(ゼミ担当制度の導入等)、B教員と連携した選書システムの構築、C工学系
          図書館のサービス体制の抜本的改善、D時間外勤務時間の減少、E非専任職員の労務管理から
          の解放が挙げられる。
    ○まとめ
           業務委託の目的はサービス向上であり、コスト削減ではないという認識が重要である。サービス向上
          が目に見える形で現れたため、業務委託に否定的だった教職員も理解を示すようになった。

  (3)事例報告に関する意見・質問
         主な意見・質問は、つぎのとおりである。
          「大学図書館の司書には、教員や院生へサポートが行える力量が求められている。それを行える
          ようにするための研修が欠かせない。それには業務委託が必要になる」
          「本学図書館では、レファレンスは専任職員の重要な業務と位置付けている。業務委託は専任職
          員にコア業務へ注力してもらうために行われるものである」
          「休日や夜間の開館時間は、委託会社に任せて問題がないのだろうか」
          「危機管理、安全性、守秘義務についてマニュアルや連絡網の整備が行われれば問題は回避され
          る」
          「図書館司書は研究者と同等という指摘があったが、人事異動との関わりからいうと図書館司書
          は特例になるのだろうか」
          「行政職は図書館の事務長クラスであり、専門職は教員の研究が分かる研究職である。そういう
          専門職には行政職と同等の地位が与えられるべきである」
          「館員の半数は司書資格者が占める必要がある。知識や経験は重要であり、教える人がいるから、
          学ぶことができる」
          「テクニカルな仕事を行える人材を、図書館内部で育成する必要があるのではないか」
          「テクニカルサービスの面では、委託業者へ任せきりにするのではなく、指示・管理できる人材
          の育成が求められる」
          「選書、利用者教育、レファレンスといったコア業務への転換が求められており、その際、教員
          と職員の連携を図ることが重要になる」
          「チームをつくって業務委託やサービス向上を目指した。夜間・休日の業務委託や機械貸出の導
          入が行われ、サービスが向上したとの評価を受けている。館員に時間の余裕と研究へ向かう気
          持ちが生まれ、それが業務委託の効果といえる」
          「開館時間を早めることを考えている図書館はあるか」
          「本学では、大学院生から24時間開館を求める声があがっている」
          「サービス向上を目指し、教育へのサポートを積極的に行う必要がある。FDに図書館がどのよ
          うに関われるかは、第三者評価の大きな項目である」